カルロス・ゴーン『私の履歴書』の感想
日経新聞『私の履歴書』のカルロス・ゴーン氏の連載が終了。
毎朝、楽しみだったので、ちょっとさみしい。
Nikkei Asian Reviewでの英語版と同時進行だったので、英語の勉強にと思って読み始めたのだけど、内容じたいが面白くて、あっという間の1か月だった。
(興味が持てる内容を、対訳がある状態で毎日少しずつ読むことができて、すごくよかった)
欲を言えば、全30回のうち、11回目ですでに『日産のゴーンさん』になってしまっていたので、彼の価値観を形成した文化的背景について、もっと知りたかった。
もちろん、仕事のエピソードの中にも、ゴーン氏の人柄やプライベートの様子がほの見えるところが、たくさんあった。
個人的なお気に入りをいくつか挙げると、
行きつけの焼き鳥屋
日産の業績回復が明らかになった頃、ゴーンさんはすっかり有名人に。
As the now CEO and president of this success story, I was graciously welcomed everywhere I went. I received requests for interviews and speeches, and I even appeared on a couple of talk shows. Suddenly even our local yakitori restaurant, one of my family's favorite hangouts, was swarmed with cameras.
(社長の私は行く先々で熱狂的に迎えられるようになり、取材や講演の依頼も殺到した。依頼された講演はできる限りお引き受けした。公共放送や民放のバラエティー番組に出演したこともあった。家族で行きつけの焼鳥屋さんが報道のカメラでいっぱいになったこともある)※日本語は日経新聞『私の履歴書』の対応箇所より
ご家族も、焼き鳥屋さんも、大変だっただろうと思う。。
<語彙メモ>
- graciously:【副】寛大に、愛想よく、快く
- hangout:【名】たまり場、行きつけの所
別々のブリーフケース
前々から抱いていたイメージどおり、いや、それ以上に、ゴーン氏の『明快さ』を感じた箇所。
日産とルノーの会長を兼務するにあたり、どう切替え、時間やエネルギーを配分するかというと、
I carried separate briefcases and had separate schedulers; the job organized itself.
(両社では別々のブリーフケースを使い、時間の配分もきっちり半分ずつだ)
かばんごと分ける! 明快で正解だと思った。
某首相へのいらだち
ルノーのコスト改善のため、ベルギーで工場閉鎖に踏み切らざるを得ない状況になった時のエピソード。
The biggest challenge was the decision to close the Belgian Vilvoorde plant, an old facility where 3,000 people worked. This caused a great deal of controversy. We had informed the Belgian prime minister about our plan to close the plant, and he went ahead and announced it publicly without our permission.
(最大の難関がベルギーのビルボールド工場閉鎖だった。3千人が働く古い工場だ。我々はまず閉鎖の計画をベルギー首相に打ち明けたのだが、首相はそれを相談もなく公表してしまった。抗議の嵐が欧州全土に広がった)
英語版では、この後さらに、
Before the Belgian prime minister made his rogue announcement, we had planned to lay out the negative financial results.
と、(ルノーの赤字決算を公表した上で、工場閉鎖を発表すれば、人々の理解も得られて状況は違っていたはずなのに)、当時のベルギー首相が勝手に軽々しく発言したことに対するいらだちが、より伝わってきた。
<語彙メモ>rogue:【形】自分勝手に行動する、面倒を起こす
おそらくオリジナル原稿は英語で、それを日本語へ翻訳しているものと思われ、翻訳のはざまのニュアンスにより、受ける印象が変わってくることを実感。
日本語・英語、両方を読んでみて、よかったと思う。いい勉強になった!
ゴーン氏のこの先の動向もフォローしたい。
それから、第28回で写真入りで登場した4人のお子さんたちが、これから活躍しだしそうな予感がして、それも楽しみ。
関連記事