翻訳できない世界のことば
他の言語では簡単に言い表すことのできない、その言語固有の独特な言葉を世界中から集めた素敵な絵本『翻訳できない世界のことば』。
英語の原書はこちら『Lost in Translation: An Illustrated Compendium of Untranslatable Words 』。
※この英語版表紙のイラストが表しているのは、イヌイット語の『IKTSUARPOK(イクトゥアルポク)』という言葉--『だれか来ているのではないかと期待して、何度も何度も外に出て見てみること』。
極寒の地で人が訪ねてくる待ち遠しさを想像すると、わくわくと切なさが入り交じったような気持ちになる。
ツボにはまった言葉
ぜんぶで52の言葉が、イラストつきで紹介されている。
その中で、ツボを直撃された言葉は、
- pisang zapra(ピサンザプラ)/マレー語【名詞】
バナナを食べるときの所要時間。(一般にはだいたい2分くらいとされているそう) - Kummerspeck(クンマーシュペック)/ドイツ語【名詞】
直訳すると『悲しいベーコン』。食べすぎがつづいて太ること。 - struisvogelpolitiek(ストラスフォーヘルポリティーク)/オランダ語【名詞】
直訳すると『ダチョウの政治』。悪いことが起きているのに、いつもの調子で、まったく気づいていないふりをすること。(ダチョウが頭を地面にうずめることから)
いずれも、その言葉が生まれることになった暮らしの風景が目に浮かぶようで、おもしろい。
お気に入りの言葉
個人的にいちばん気に入った言葉は、これ。
<画像:amazonの書籍イメージより>
- poronkusema(ポロンクセマ)/フィンランド語【名詞】
トナカイが休憩なしで、疲れず移動できる距離。
ちなみにその距離とは、約7.5kmとのこと。
トナカイが身近な土地の人にとっては、直感的にイメージできるってことなんだろう。
疲れず移動できる距離、というトナカイへの配慮が、なんかいい感じ。
BOKETTOとは?
日本語からも、次の4つが紹介されていた。
- KOMOREBI(木漏れ日)
- BOKETTO(ボケっと)
- WABI-SABI(侘び寂び)
- TSUNDOKU(積ん読)
木漏れ日や詫び寂びはともかく、『積ん読』が他の言語には存在しないらしいのは衝撃だし、さらに『ボケっと』が取り上げられていることにおどろいた。
ちなみにBOKETTOの意味は、
なにも特別なことを考えず、ぼんやりと遠くを見ているときの気持ち
と説明されていて、次の解説がつけくわえられていた。
日本人が、なにも考えないでいることに名前をつけるほど、それを大切にしているのはすてきだと思います。
そう言われてみると、BOKETTOがかけがえのないものに思えてくるから不思議だ。
気持ちの名前
他にも、遠い国で使われている、身に覚えがあるけど、言葉にして取り出したことのなかった感情をあらわす言葉があって、どきりとした。
イラストも個性的で素敵だし、大切な人へのプレゼントとしてもいい本かもしれない。
読まずに『積ん読』にされてしまう心配は、まずないと思う。
書籍情報
関連記事
誰も知らない世界のことわざ(『翻訳できない世界のことば』の続編)